【パリ=三井美奈】イタリアのマッタレッラ大統領は28日、国会を解散し、来年3月4日の総選挙実施が決まった。世論調査では、欧州連合(EU)に懐疑的なポピュリズム(大衆迎合主義)野党「五つ星運動」が首位を走っており、どこまで票を伸ばすかが焦点。選挙戦から組閣まで大混乱が予想される。

 五つ星運動の首相候補、ルイジ・ディマイオ下院議員は31歳。ウエーターやウェブサイトのデザイナーを経て、2013年に下院議員に当選。いきなり副議長になった。「私は若者の失業率が60%の地域出身。私の経歴をばかにする人は、この国の若者をばかにするのと同じ」と訴える。

 同党はコメディアンのベッペ・グリッロ氏が09年に設立した。「ユーロ離脱の是非を問う国民投票の実施」を視野に入れる。

 「既成政治の打破」以外に一貫した政策や主張がないものの、インターネットで候補者を公募する目新しさが、政治不信の根強かった有権者から支持されている。22日発表の支持率調査では29%で首位だった。

 ジェンティローニ首相の与党で中道左派、民主党は書記長(党首)のレンツィ前首相が返り咲きを狙うが、支持率では23%前後で2位。どちらが勝っても議席の過半数を占めるのは難しい。

 そこで最近では、ベルルスコーニ元首相の「復権」が注目される。元首相が率いる中道右派フォルツァ・イタリアは支持率16%だが、かつての連立パートナー「北部同盟」が反移民政策を鮮明にして12%の支持を集める。イタリアには昨年来、約30万人の難民・移民が流入しており、治安悪化を懸念する有権者に浸透した。

 五つ星のグリッロ氏は、「既成政党とは絶対に組まない」と公言しているため、組閣可能な組み合わせは民主党と右派の大連立以外にない。脱税で有罪判決を受け、現在は議員資格を停止されているベルルスコーニ氏に、注目が集まるのもこのためだ。フォルツァは中道右派連合を率いて11月のシチリア州議会選で勝利し、勢いに乗る。

 ジェンティローニ首相は28日、議会解散前の記者会見で、「選挙戦では不安や幻想をかきたてないようにすべきだ」と述べ、大衆迎合主義の横行にクギを刺した。

 しかし、選挙戦では実現不可能な公約が飛び交うのは必至。イタリア経済は最近、ようやくユーロ危機から回復の兆しを見せているが、次期政権成立までの混乱は国内のみならず、ユーロ圏全体の不安材料になる可能性が高い。