ワールドカップ・ロシア大会出場を目指す中国代表は、イタリアの名将マルチェロ・リッピを三顧の礼で迎い入れ、苦戦を続けるアジア最終予選を戦っていた。
リッピ就任までの中国代表は、イラン、韓国、ウズベキスタンなど強豪ひしめくグループAで、4戦未勝利の高洪波監督を更迭。予選突破には極めて厳しい状況を迎えていた。
リッピ体制での初陣は、カタールを相手にスコアレスドローを演じたが、年明け最初の韓国戦で、かつては恐韓症という表現を用いて、韓国を苦手にしていたはずの中国代表が、早くも奇跡を起こすことになる。
2017年3月23日、中国湖南省の省都長沙で行なわれた韓国戦で、前半34分にFW于大宝(北京国安)が突き刺した虎の子の1点を守り切り、ワールドカップ・アジア予選においての歴史的な勝利を飾ったのだ。
韓国の猛攻をしのぎ切り、試合終了と同時に会場の熱気は最高潮に達する。まるで本大会への出場を決めたかの如く観衆は狂喜乱舞、この試合でゲームキャプテンを務めたDF馮瀟霆(広州恒大)は、試合後のインタビューで感涙をこぼしている。
その後の中国代表は、イランとのアウェイ戦を落とすものの、その他では確実に勝ち点を積み重ね、一時は予選敗退が確実視されていた状況から脱することに成功。最終予選の最終節までプレーオフ進出の可能性を繋いで見せたリッピの手腕は評価に値する。
マルチェロ・リッピの中国代表監督としての契約は、2019年のアジアカップまで。窮地の中国代表を救ったリッピの存在は、すでに中国内では神格の域に達している。